ラストゲーム②《インターハイ県予選最終日》
小禄高校に勝利した後、
1試合空けてすぐに西原高校と対戦しました。
西原高校戦が、インターハイ最後の試合でした。
実は、6年前の同じ日。
高校三年生だった私のインターハイ最後の試合も
対戦相手は西原高校でした。
そのせいもあって、
私もこの対戦には力が入っていました。
しかし、試合前。何かがおかしい。
選手の目が死んでいる。
そう感じた時、
サポートに回っていた1人の生徒から
「心ないことを言われた」
という話を聞きました。
詳細までは聞きませんでしたが
選手に影響があったのは明らかでした。
試合前、もう一度選手を集めてこう話しました。
“ 何を言われたかは知らないが、
これがインハイ最後のゲームになる。
自分たちが悔いないように。
あなたたちの試合なのだから。”
選手たちは少し気を戻し、
最終戦、西原高校と戦いました。
しかし、第1セット序盤。
してはいけないミスをしてしまいました。
三年生2人がお見合いをして
ボールを落としてしまいました。
そこから崩れ始めたチームの流れを
最後まで止めることができなかった。
思うようにプレーできない選手たち。
まだ少し試合前のことを引きずっているように見えました。
そして、私はそれを
コートの外で見守るしかできませんでした。
第1セットを落とし、
あとがなくなった第2セット目。
やはり流れは西原高校にありました。
コザ高校のエースにブロック3枚をつけ、
完全なマークしていました。
それに対して、コザ高校は対応が遅れ、
完全に相手の思うツボでした。
歯車が狂ったコザ高校は
今まで一度も出なかったミスが続き、
一度も流れを掴むことができずに
2セット目も落とし、
インターハイ最後の試合は敗戦で終わりました。
1勝2敗で幕を閉じた
三年生最後のインターハイ。
3チームが1勝2敗でならび
セット率で4位に終わりました。
私の実力不足で勝たせてあげることができなかった。
私にとっては
とても、とても悔しい大会になりました。
最後のミーティング。
私は子供達にかけてあげられる言葉が見つかりませんでした。
できれば、最後のミーティングなんて
しなくなかった。
この試合で多くの三年生が引退すると言っていました。
ここで、終わりにしたくなかった。
そう思うと、
試合に負けた悔しさと、
勝たせてあげられなかった悔しさと、
終わりにしたくないという気持ちで
涙が出てきました。
泣くつもりはなかったのだけれども。
このチームは本当に良いチームになりました。
一年前、当時二年生だったこの子達が中心だったチームは、
1回戦で姿を消すことになりました。
“ 負けたくない。だからユリカさん指導お願いします。”
“やるからには、勝つチームを目指す。
そのためには、厳しくする。
それについてくる覚悟はあるの?”
“あります!”
この会話から始まった、新チーム。
心が弱いキャプテンでエース、
怪我から復帰した不器用な第2エース、
自信がないセッター、
すぐ諦める2年生センター、
一生懸命すぎて空回りする両センター、
いつも行き当たりばったりでレシーブするリベロ。
それぞれに課題が多く、
それを一つ一つ潰していくことから始まった今年のチーム。
新チーム結成当初は、
正直、ベスト8に入れたら上出来なんじゃないかと思っていたくらいでした。
チーム結成から、
3大会は常に2回戦敗退。
ベスト4に入るどころか
シード権すら獲得できない状況が続きました。
毎大会敗戦するたびに
ー 今年のチームはダメなんじゃないか。
そう思ってしまうくらいでした。
そんなチームが、
最後の最後にベスト4に食い込み、
決勝リーグでも一度も勝てなかった相手に
勝ち星を挙げることができました。
本部席で見ていた他のチームの先生方や
県バレーボール協会のお偉いさん方は
コザ高校の “ 奇跡 ”
と、口々に言っていました。
でも、これは奇跡なんかではありません。
彼女たちの1年間を
近くで見てきた私は、
この大躍進は「奇跡」という言葉で
表現することはできないと思います。
今大会の彼女たちの活躍は、
彼女たちのこの1年間の努力と頑張り、
そして何よりバレーボールを好きな気持ちに対する
正当な結果だと私は思います。
彼女たちは「奇跡」でベスト4に入ったのではなく、
「実力」でベスト4に入ったのです。
私は、正直
ここまでこのチームが強くなるとは思いませんでした。
*
*
今まで心が弱く、
キツイ場面で逃げてばかりいたエースは
最後の最後まで相手コートにスパイクを叩きつけ、
試合中、一度も逃げなかった。
このチームで、多分一番私が気にかけていて、
なおかつとても厳しく指導した選手だ。
彼女は誰よりも成長した。
彼女の成長が、
このチームが強くなった最大の理由だ。
彼女は間違いなく、
沖縄県ナンバーワンのエースに育った。
*
*
怪我から復帰した不器用な第2エースは
苦手だったレシーブを克服し、
ただ思い切り打ってるだけだったスパイクも
軟打やフェイントを混ぜ、
器用にボールを扱ってみせた。
「頼られるエースになりたい」
試合前にそう話した彼女は
間違いなく頼れるエースになっていた。
*
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自信がなかったセッターは
大事な場面でも冷静に完璧なトスワークを
私たちに堂々と見せつけてくれた。
「これがベストなんだ!」
という強い気持ちであげたトスは、
今までで見たことがないくらい
最高のトスだった。
*
*
すぐ諦めてしまっていた2年生センターは、
試合前に足首を怪我したにも関わらず、
治療をしながら試合に出ることを決めた。
彼女がいなければこのチームはうまく機能しないことへの責任感が
少し芽生えたのかもしれない。
試合では彼女のサーブで何度もチームのピンチを救ってくれた。
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いつも一生懸命すぎて空回りしていたセンターは、
いつのまにか空回りすることがなくなり、
冷静にプレーすることを覚えていた。
彼女がいつも一生懸命だったからこそ、
ベスト4をかけた那覇高校とのラストポイント。
彼女が打ったライトからのスパイク。
ちゃんと手にはまらなかったが
相手コートの誰もいないところへ
ボールが落ち、勝つことができた。
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もう1人のセンターの子は、
大会初日にとても調子が悪かった。
負けてもいないのに、
チームに申し訳ないと涙を見せた。
しかし、そんな彼女をチームメイトは
試合中もみんなでフォローした。
それは日頃から彼女がチームのために
人一倍努力し、頑張ってきたからこそ、
「次は私たちがフォローする番だ」
と周りのチームメイトに思わせられたこと。
そして、その事があった翌日、
彼女は見事に調子を取り戻し、
今度はチームのピンチを何度も救ってくれた。
*
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今まで何度も
「元気がない」
「後ろからチームを盛り上げなさい」
と言われ続けていたリベロ。
レシーブは行き当たりばったりで、
調子に波があった。
正リベロから外されることも多かった。
そんな彼女が
インターハイでは、後衛からチームを盛り上げ続けた。
レシーブが得意ではない選手の分まで
小さな体でコートの隅から隅まで
時にはコート外へ飛んだボールまでも
彼女は拾い続けた。
彼女がレシーブを上げるたびに
チームは盛り上がった。
*
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今年の4月から加わった一年生3人。
いい意味で、“一年生らしくない”子達で、
勝負強く、崩れにくい。
大型ルーキーとして
何度も先輩たちを助けてくれた。
まだ一年生の彼女たちが
これからどれだけ大きくなれるか。
楽しみだなぁと思いました。
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インハイ予選最終章『選手への感謝』ー私の高校バレーを終わらせてくれてありがとうー
へ、つづく・・・
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